速度目標(Target Velocity)をどう決めるか

VBT(Velocity Based Training)を導入すると、 次に悩みやすいのが 「結局、どの速度を目標にすればいいのか」 という問題です。

速度が測れるようになっても、 ただ数値を眺めるだけでは現場では活きません。 重要なのは、 その日の種目・狙い・選手の状態に対して、どのくらいの速度を目指すべきか を決めることです。

この記事では、 Target Velocity(速度目標) をどう考え、どう現場に落とし込むかを、 難しくしすぎず実践向けに整理します。

この記事のポイント

  • Target Velocityは「狙うべきトレーニングの質」を数値化したもの
  • 最初に決めるべきは速度そのものではなく、その日の目的
  • 厳密な正解よりも、同じ基準で継続して使うことが大切
  • 現場では「速すぎる」「遅すぎる」を見分けるだけでも十分価値がある

そもそもTarget Velocityとは何か

Target Velocityとは、 簡単に言えば 「そのセットや種目で狙いたい速度帯」 のことです。

たとえば、 今日は筋力寄りなのか、 パワー寄りなのか、 スピード寄りなのかによって、 適した速度帯は変わります。

同じスクワットでも、 重くゆっくり扱いたい日と、 速く鋭く動きたい日では、 目指すべき数値が違って当然です。

つまりTarget Velocityは、 「今日はどんな出力を出したいのか」 を数値の形で明確にするための考え方です。

最初に決めるべきは「速度」ではなく「目的」

現場でありがちなのが、 先に数字だけを決めようとすることです。

しかし本来は逆で、 まず整理すべきなのは その日の目的 です。

  • Strength:重さを扱うことが重要
  • Power:力を速く発揮することが重要
  • Speed:軽快さや鋭さを保つことが重要

目的が決まれば、 その目的に合う速度帯を選びやすくなります。 逆に目的が曖昧なままでは、 どんな速度目標を置いても現場判断がブレやすくなります。

速度目標は「正解を当てる」より「ズレを見抜く」ために使う

Target Velocityを考える時に大切なのは、 最初から完璧な数値を当てにいくことではありません。

現場ではむしろ、 「速すぎる」「遅すぎる」「ちょうどいい」 を見分ける基準として使うほうが実用的です。

たとえば、 パワー狙いの日なのに明らかに遅いなら負荷が重すぎる可能性がありますし、 逆に速すぎるなら刺激が軽すぎる可能性があります。

つまりTarget Velocityは、 狙いと現実のズレを見つけるためのもの と考えると使いやすくなります。

まずは「ゾーン」で考えると分かりやすい

現場では、 最初から細かい数値を1つに固定するより、 おおまかな速度ゾーン で考えるほうが運用しやすいです。

たとえば、 Strength寄りなら低速帯、 Power寄りなら中間帯、 Speed寄りなら高速帯、 という整理です。

この考え方なら、 多少の個人差や機器差があっても現場で回しやすくなります。

最初の整理イメージ

  • 低速帯 → Strength寄り
  • 中間帯 → Power寄り
  • 高速帯 → Speed寄り
  • その種目の中で、今日はどの帯を狙うか決める

つまり、 Target Velocityは最初から「1点」で決めるより、 「このあたりを狙う」 という幅で持つほうが現実的です。

種目ごとに同じ速度目標を使わない

ここは非常に重要です。 すべての種目で同じTarget Velocityを使うべきではありません。

スクワット、ベンチプレス、ジャンプ系、引く動作では、 そもそもの動作特性が違います。 同じ選手でも、種目が変われば速度の出方は変わります。

そのため、 「この数値が正解」と種目をまたいで一律に扱うと、 現場でズレやすくなります。

基本は、 種目ごとに基準を作る ことです。同じ選手でも、種目ごとに「その種目らしい速度目標」を持つ必要があります。

選手ごとにも多少変わる

さらに言えば、 同じ種目でも選手によって速度の出方は変わります。

体格、経験、フォーム、得意な出力特性によって、 同じ重量比でもスピードの出方は少しずつ違います。

だから現場では、 最初はチーム共通の目安を使いつつ、 運用しながら その選手にとっての平常値 を作っていくのが実践的です。

Target Velocityは、 理論上の理想値だけで決めるより、 実際にその選手がどう動くか を見ながら微調整していくほうが強くなります。

現場で決めやすい方法①:いつもの良い反復を基準にする

実践的でおすすめなのが、 その選手の「いつもの良い反復」 を基準にする方法です。

たとえば、 その種目でフォームも良く、狙い通りに動けていた日の速度を見て、 そこを1つの基準にします。

そうすると、 今日はそれより遅いのか、 同じくらいなのか、 逆に速すぎるのか、 を判断しやすくなります。

この方法の良い点は、 難しい理論よりも 現場の実データから基準を作れること です。

現場で決めやすい方法②:ウォームアップ速度から逆算する

もう1つ使いやすいのが、 ウォームアップの反応から当日のTarget Velocityを考える方法 です。

いつものウォームアップ重量が速く動いているなら、 その日は少し高めの出力を狙える可能性があります。 逆に、ウォームアップから鈍いなら、 その日の目標速度を守るために負荷を抑える必要があるかもしれません。

つまり、 Target Velocityは固定値というより、 その日のコンディションの中で達成可能な狙い として扱うことも大切です。

こう考えると、 速度目標は計画と現場をつなぐ役割を持ちます。

「目標速度に届かない時」の考え方

ここも現場でよく悩むところです。 Target Velocityを決めても、 毎回ぴったり届くとは限りません。

重要なのは、 届かなかった時に 「失敗」と考えないこと です。

目標速度に届かない時は、 負荷が重すぎるのか、 疲労があるのか、 フォームが崩れているのか、 あるいはその日の状態に対して目標設定が高すぎるのかを考える材料になります。

つまり、 届かないこと自体にも意味があります。 Target Velocityは、 その日の調整判断を助ける基準 でもあるのです。

「速すぎる時」も見逃さない

逆に、 目標よりかなり速い時もあります。

これは一見良さそうですが、 必ずしも手放しで良いとは限りません。 速すぎるということは、 その日の目的に対して刺激が軽すぎる 可能性もあるからです。

たとえばStrengthやPower狙いの日なのに、 明らかにスピード寄りの反応しか出ていないなら、 重量設定を見直す余地があります。

Target Velocityは、 遅すぎる時だけでなく、 速すぎる時の調整 にも役立ちます。

最初は「狭く決めすぎない」のがコツ

導入初期でありがちなのが、 いきなり細かく設定しすぎることです。

ですが現場では、 個人差、種目差、その日の状態差があるため、 最初から狭い幅に当てはめようとすると運用が止まりやすくなります。

そのため最初は、 少し余裕のある目標帯 を持つほうが実践的です。

導入初期の考え方

  • まずは目的ごとに大まかな速度帯を決める
  • 種目ごとに基準を分ける
  • 選手ごとの平常値を少しずつ作る
  • 速すぎる・遅すぎるを見分けられれば十分前進
  • 細かい最適化はデータが溜まってからでよい

これなら、 難しくしすぎずにTarget Velocityを現場へ落とし込みやすくなります。

まとめ:速度目標は「その日の狙いを守るための基準」

Target Velocityは、 ただの数字ではありません。 それは、 その日に狙いたいトレーニングの質を守るための基準 です。

最初に決めるべきは速度そのものではなく、 Strengthなのか、 Powerなのか、 Speedなのかという目的です。 そこが整理されると、 速度目標は自然と決めやすくなります。

また、 Target Velocityは完璧に当てるものではなく、 速すぎる・遅すぎる・ちょうどいい を見分けるために使うと実践的です。

現場では、 細かな理論よりも、 同じ基準で継続して見て、調整に活かすこと が最も重要です。Target Velocityは、そのための非常に強い道具になります。

速度目標は、数字を当てるためではなく「狙いを守るため」にあります

大事なのは、毎回ぴったり同じ数値を出すことではありません。 その日の種目・目的・状態に対して、狙うべき質に近づけることが重要です。

Target Velocityを持つと、VBTは単なる計測ではなく、現場で負荷を整える判断ツールとして機能し始めます。

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