なぜメジャーではVBTが当たり前になり、日本ではまだ広がっていないのか
VBT(Velocity Based Training)は、 欧米、 特にメジャーリーグや大学スポーツ、 プロのストレングス現場ではかなり一般的な考え方になりつつあります。 一方で日本では、 まだ 「一部の詳しい人が知っている専門用語」 という印象が強く、 現場全体に広がっているとは言いにくい状況です。
同じ野球でも、 なぜここまで差があるのでしょうか。 それは単に 日本が遅れているから という話ではなく、 指導文化、 現場の人数構成、 予算、 情報量、 導入のしやすさなど、 いくつかの構造的な違いがあるからです。
この記事では、 なぜメジャーではVBTが当たり前になりやすく、 日本ではまだ広がっていないのか を、 現場目線でできるだけ分かりやすく整理します。 同時に、 日本でこれからVBTが広がる可能性についても考えていきます。
この記事のポイント
- メジャーでは「測って調整する文化」が強く、 VBTが入りやすい
- 日本は部活文化・人手不足・予算制約の影響で、 高度な運用が広がりにくい
- 日本で足りないのは理論そのものより「現場で回る翻訳」
- 今後はトップ選手の発信や、 導入しやすい仕組み次第で一気に認知が進む可能性がある
まず結論:差があるのは「理論の優劣」ではなく「現場の構造の違い」
先に結論を言うと、 メジャーと日本で差がある理由は、 VBTの理論が難しいからでも、 日本人に合わないからでもありません。
一番大きいのは、 VBTを使いやすい現場構造があるかどうか です。 つまり、 測定できる人、 データを解釈できる人、 導入予算、 継続運用の時間、 それを必要とする文化が揃っているかどうかで、 普及しやすさが変わります。
メジャーではそれが比較的揃いやすく、 日本の部活や一般的な現場では揃いにくい。 ここが一番大きな違いです。
メジャーでは「測って調整する」が当たり前だから
メジャーリーグや欧米の高いレベルのS&C現場では、 トレーニングを 感覚だけでなく、 データを使って調整する ことが当たり前になっています。
たとえば、 筋力、 パワー、 ジャンプ、 スプリント、 可動域、 睡眠、 投球負荷など、 さまざまな要素を数値で見ながら管理する文化があります。 その延長線上に、 バーベル速度を見て負荷を調整するVBTが自然に入ってきます。
メジャーでVBTが入りやすい理由
- データをもとに調整する文化が強い
- S&Cコーチやアナリストなど役割分担がある
- 機材導入や継続運用の予算が取りやすい
- 競技力向上のための細かい差分に投資する価値が高い
- 「感覚だけでなく、 客観指標で見る」ことへの抵抗が少ない
つまり、 VBTだけが特別なのではなく、 もともとデータ活用が根付いている土壌の上にVBTがある という理解が近いです。
日本は「理論が正しい」だけでは広がらない
一方の日本では、 特に高校野球や部活の現場になると、 理論が優れているかどうかだけでは導入は進みません。 現場ではまず、 回るかどうか が問われます。
たとえば、 選手数が多い、 指導者が少ない、 練習時間が限られている、 競技経験のない顧問が担当している、 予算が厳しい、 機材の管理が難しい、 という状況では、 良い理論でも複雑すぎると定着しません。
つまり日本では、 「正しいから入る」ではなく、「簡単に回るから入る」 のです。 VBTが広がりにくいのは、 このハードルを越える仕組みがまだ少ないからです。
日本で広がりにくい理由①:部活は大人数・少人数指導で回っている
日本の高校野球や部活現場では、 一人の監督やコーチが多くの選手を見ることが珍しくありません。 その中で、 一人ひとりのトレーニング速度を細かく見て、 データを解釈し、 当日に調整するのは、 理想としては良くても実務ではかなり大変です。
しかも、 部活は練習だけでなく、 生活指導、 大会運営、 連絡、 進路対応なども含めて回っています。 その中で新しい測定運用を増やすには、 かなりハードルがあります。
日本の部活現場で起こりやすい壁
- 人数が多い
一人ずつ測るだけで時間がかかりやすい - 指導者が少ない
測定・記録・指導を同時に回しにくい - 運用の継続が難しい
最初はやれても、 忙しくなると止まりやすい
この構造を無視して、 海外の成功例だけをそのまま真似しても、 日本では続きにくいことが多いです。
日本で広がりにくい理由②:機材が「難しそう」「高そう」に見える
VBTは良くも悪くも、 日本ではまだ 専門機材を使う高度なトレーニング に見られがちです。 ここで多くの現場が止まります。
実際には、 完璧な運用を最初から目指さなくても始められる部分はありますが、 入口の印象として 「高い」「難しい」「プロ向け」 になると、 部活や一般現場では導入の優先度が下がります。
特に日本では、 予算が限られる中で、 ボール、 遠征、 グラウンド、 治療、 ユニフォームなど、 他にも優先順位の高い支出が多くあります。 その中でVBT機材が後回しになりやすいのは自然なことです。
日本で広がりにくい理由③:日本語の情報資産がまだ少ない
欧米では、 VBTに関する論文、 実践レビュー、 導入事例、 YouTube動画、 比較記事、 コーチ向け教育コンテンツが豊富です。 そのため、 興味を持った人が学びやすく、 周囲にも説明しやすい環境があります。
一方で日本は、 まだ 「そもそもVBTとは何か」 の段階にある人が多く、 現場向けの日本語情報は決して多くありません。 しかもあっても、 専門寄りで難しく見えるものが少なくありません。
日本で不足しやすい情報
- 高校野球でどう回すか
- 少人数スタッフでも使える方法
- どこまで簡略化しても実用になるか
- 機材比較と導入順序
- 失敗しないための運用設計
要するに日本で足りないのは、 理論そのものより、 現場に合わせて噛み砕いた情報 です。
日本で広がりにくい理由④:「悩み」では検索されるが、「VBT」では検索されにくい
日本では、 VBTそのものを指名して検索する人はまだ多くありません。 ですが実際には、 現場は日々いろいろな悩みを抱えています。
たとえば、 「打球速度を上げたい」 「疲労を見ながら練習を調整したい」 「やりすぎを防ぎたい」 「客観的に評価したい」 といった悩みです。 これらは、 本質的にはVBTと相性の良いテーマです。
つまり日本では、 解決したい問題はあるのに、 解決法の名前としてVBTがまだ浸透していない のです。 ここが、 欧米との大きな違いの一つです。
では、なぜ今後は広がる可能性があるのか
ここまで見ると悲観的に感じるかもしれませんが、 実は日本でもVBTが広がる可能性は十分あります。 むしろ今は、 その入口に立っている段階とも言えます。
理由は、 トップ選手がデータ活用を語り始めていること、 日本語の情報が増え始めていること、 そして 「感覚だけでは限界がある」 と多くの現場が感じ始めているからです。
今後広がる可能性がある理由
- メジャーリーガーなどトップ選手が発信を始めている
- 日本語で学べる情報が少しずつ増えている
- 疲労管理や再現性への関心が高まっている
- 従来の感覚頼みだけでは限界を感じる現場が増えている
- 現場向けに簡略化した仕組みが出てくれば一気に広がりやすい
つまり、 日本で必要なのはVBTの理論をさらに増やすことより、 日本の現場に合う形で翻訳し、 続けやすくすること です。
本当に必要なのは「日本版VBT」の設計
メジャーのような環境をそのまま再現する必要はありません。 日本には日本の現場事情があります。 だから必要なのは、 欧米の理論を丸ごとコピーすることではなく、 日本の部活やチームで回るVBTの形を作ること です。
たとえば、 全員を完璧に測らなくてもいい、 基本種目から始める、 数値を難しく語りすぎない、 まずは 「今日は速いか遅いか」 を見るだけでも意味がある。 こうした設計なら、 現場に入りやすくなります。
要するに、 日本で広がるかどうかは、 VBTが正しいかどうか ではなく、 どこまで現場に優しくできるか にかかっています。
まとめ:日本で広がっていないのは、価値がないからではなく「現場翻訳」が足りないから
メジャーでVBTが当たり前になりやすいのは、 測って調整する文化、 人材、 予算、 情報量、 役割分担が揃っているからです。
日本でまだ広がっていないのは、 VBTに価値がないからではありません。 大人数の部活現場、 人手不足、 予算制約、 情報不足の中で、 まだ「簡単に回る形」に翻訳され切っていないから です。
逆に言えば、 そこを解決できる人やサービスが出てくれば、 日本でもVBTは一気に認知される可能性があります。 今はまだ黎明期ですが、 だからこそ、 これから形を作る余地が大きいテーマだと言えます。
日本でVBTが広がる鍵は、「正しい理論」より「現場で回る形」
メジャーでは土台があるからVBTが自然に広がりました。 日本では、 そのまま輸入するだけでは定着しにくいのが現実です。
だからこそ今必要なのは、 日本の野球現場に合う “日本版VBT” を作ることです。
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